しろくて青い南極大陸。
Black Rebel Motorcycle Clubの「Whatever Happened to My Rock'n'Roll」ではじまり「Love Burns」で終わる69分の短いフィルム。
ロンドンのBrixton Academy。BRMCのライブで出会う。
愛を交わし、音楽をかけて踊り、またベッドに飛び込む2人。
Von Bondiesのライブの後のシーン。キッチンで、テーブルで、キラキラとしたやわらかい光の中で愛を確かめ合う2人があまりにも綺麗で幸せそうで、たまらなく悲しかった。まさかこの映画でも涙を落とすなんて、思ってもいなかった。
ドライブする2人。車内に流れるのはFranz Ferdinandの「Michael」。リサのボーイフレンドの話。ブラジル人、アルゼンチン人、ドイツ人、そして今はイギリス人。
冬の海にざぶざぶと入っていくマット。愛してるよ!と叫びながら。
そしてPrimal Screamのライブ。Bobbyが高らかに歌う「Movin' On Up」。
私が幾度か見た彼らのライブでは、この曲は最後の方にやることが多かった。夜明けの到来を予感させるような、そんな光に溢れた曲だなあとはなんとなく思っていたけれど、改めて訳詞を見て驚いた。あのボビーが、こんな詞を歌っていたなんて。シンプルだけれど、未来を信じたくなる、希望を持ちたくなる、そんな言葉が彼の体から発されていたなんて。ああ、私はいままでボビーのどこを見ていたんだろう。
Super Furry Animalsのライブに、リサは来なかった。
リサの誕生日。マイケル・ナイマンのコンサート。
つながっていても、心が離れていく。
最後、ひとりで行ったBRMCのライブ。ステージ上のPeterが「Love Burns」を歌う。ああ、こんな歌詞だったんだ。Peterはあんな佇まいでこんなやりきれない詞を歌っていたんだ。
この歌詞に、どうしてもマットの心境を重ね合わせてしまう。そしてまた涙をこぼす。何度も何度も聞いた曲なのに、ライブで何度もはしゃいだ曲なのに、こんな歌だったなんて知らなかった。今までの私はなんにも分かっちゃいなかった。
セックスと音楽ばかりの感傷的すぎる映画にこんなにも入り込んでしまったのは、どうしてなのだろう。
私はたまたま、この映画でライブシーンが流れた8アーティストのうち4バンドのライブを見たことがある。6バンドのCDを持っている。だからこそ、こんなにも簡単に入り込めてしまったのだろうか。
私の体に染みついているこれらの音楽を通じて、個人的な記憶を無意識に潜り込ませてしまっていたのかもしれない。もし劇中で流れている音楽を知らなかったら、面白くもなんともなかったもしれない。
これはきっと、きわめてパーソナルな映画なんだろうと思う。皆が絶賛するような映画ではない。皆が及第点をつけるような映画では決してない。それでいいんだと思う。泣きたくなるほど甘くて痛い、恋の物語。この映画は友人と行くものじゃない。体を触ったことのない人と見に行くような映画じゃない。行くならひとりか、それか好きな人と。愛し合ったことのある人と。そういう映画。
- 9 Songs (2004/英) [IMDb]
- 監督:マイケル・ウィンターボトム
- 出演:キーラン・オブライアン/マルゴ・スティリー
- http://www.finefilms.co.jp/9songs/
- シネアミューズEAST
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